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ワイン流通ストレス理論:前編 〜シン・ワインの神様〜

今回はワインコンディションのお話。

ワインを美味しく楽しむためにぜひ知っていていただきたいお話です。

業界が抱える事情ゆえに、ほとんどの方がそのワインの本来のポテンシャルでは味わえてないという仮設をもとに記述します。

 

■例えば-------------------

 

以下のような出来事に覚えはないでしょうか。

 

:旅の思い出

海外旅行先で飲んだワインが「美味しかったわ」というお話はよく聞きます。

そして同じものを日本国内で探して飲んでみても旅の記憶ほど「美味しくない」という切ないストーリー。

その多くは旅の美化されたもの、記憶と共に美しい思い出はそっとしまっておきましょう。

 

:偶然の産物

あまり好みではないと思って飲まずに長期間おいたワインが意外なほど美味しかった件

これを業界では「ワインの神様の贈り物」とされています。

 

:ワイン売り場の特価品

お客様からこんな話を。

全国にある超一流ワインショップで勧められた「ヴィンテージワインがとても安かったのだがあまり美味しくなかった。というか状態が悪かったように思う」

 

これはいわゆる「安かろう悪かろう事件」で、十分立件できますので現物をもって告発していただきたい。

このご時世、値段だけ見て「お! 安っ!」と飛びついてアタリを引けるほど甘い世の中ではありません。 

安いことには理由があり、裏があります。

そもそも今時ワイン売り場とセラーに仕切りもないような管理の仕方はNGです。

 

■検証---------------------------------------------------------

 

上記のようなケースはどのようにしておきたのでしょうか。

その手元にあるボトル。 または今お店で飲んでいるそのワインがどのような経路でその場所にたどり着いたのか、少し検証してみましょう。

 

大まかなイメージ:

 

①海外産地の生産者

②現地の港湾

③船で揺られて(スエズ運河も通ります)

④日本到着

⑤輸入商社の倉庫

⑥運送会社

⑦各地の酒屋

⑧飲食店(個人宅)

 

と、だいたいこんな感じで期間にすると2ヶ月くらいを経ております。

 

しかし問題は

 

” はやく到着しても意味はない ”

 

わけです。  けしてワインは「新鮮さ」は売りではありません。

 

流通経路順で言うところの ⑤ と ⑦ が重要です。

 

現在、ワインマーケットは成熟し多様化。

世界中のワイン産地から素晴らしいワインを探し年間生産量1万本にも満たないようなブティックワイナリーまで相手にしています。

ひとたびそれらが人気を呼ぶとなると市場で取り合いになるため、輸入元さんは予め販売先に本数割当を施します(アロケーション)。

これは日本に入船する前から始まり、実際コンテナが届き通関が切れると同時に割り当てられた酒販店等に出荷されます。

そして当店のようなワインショップや酒屋さんに届くやいなやこれまた「早もの勝ちっすよ」と即座に販売され早いものは1日で完売します。

 

つまり、 ” 海外出張を経て日本に帰ってくるそばから即仕事 ” みたいなモーレツ社員バリに頑張ってはいるものの実際にはヘトヘトですよ。 な、状態がこのワインです。

とうぜん本来誇るべきパフォーマンスは発揮されない状態で飲まれてしまうと、「あれ?! このワインネットで人気な銘柄のはずなのにそれほどでもないよね」な感じです。

やっかいなのはこういった「取っ手だし」の疲れたワインが試飲会やセミナーで公然と使われているという事実です。

コンディションが悪いワイン相手にやれ「新樽比率〇〇%ですね」とか「ピラジンが」など「pHはいくつですか」との発言などまさにナンセンスで片腹痛い。

至極残念ですね。

 

【結論】

現地から届いたばかりのワインは「荒れている」のです。

一概には言えませんが、泡ものですとやはり泡立ちが雑。

白ワインは酸味が際立ちマイルドさが無い

繊細なタイプの赤ワインは酸がたちエグミも前面にでてます。

今まで「あまり美味しいと感じなかった」というご意見の多くは流通ストレス下に晒されたままのワインを飲んでしまった場合が多いと察します。

 

たとえ一週間でも休ませる時間を与えるだけでそのパフォーマンスはだいぶ回復します。

できれば数ヶ月はおきたいところです。

ワインセラーはワインを美味しくする魔法の箱ではありませんが、ここで安静にストックすることで現地で瓶詰めされた当時の状態に近づけることができる唯一のツールです。

 

 

次回後編は 〜ワインセラーとは〜 に続きます。